イマーシブオーディオへの挑戦 その2「ノイマンU87でバイノーラル」

今回は大胆にも「ダミーヘッドを使ったバイノーラル録音はもう古い!」というお話です。
「NEUMANN U87Ai」と言えばボーカルレコーディングやナレーションの収録では定番のマイクで私どもスタジオネイバーズでもほぼこのマイクを使って収録を行っています。
前回のその1ではアンビソニックマイク「ZOOM H3-VR」の実用性についていろいろ実験をやりましたが、イマーシブオーディオにおいてもこの定番マイクを使いたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
ということで今回は第二弾としてイマーシブオーディオの素材としてノイマンU87Aiで録音した音声の活用法について実験を行いました。
今回の実験では声優の牧野郁恵さんにご協力を頂きました。
NEUMANN U87Ai

NEUMANN U87Ai

 

これがその定番マイク「NEUMANN U87Ai」です。
もうボーカル録音やナレーション収録ではほぼこのマイクを使っていると言ってもいいくらいの定番マイクです。

 

 

まずは前回使った「ZOOM H3-VR」とどのくらい音質が違うのかを確認してみたいと思います。
実験はまったく同じ収録環境で比べたいのでH3-VRとU87Aiの両方を用意してボイスサンプルの録音をしてみました。

ZOOM H3-VRの音質テスト

いかがでしたでしょうか?
そもそもH3-VRはスモールダイアフラム、かたやU87Aiはラージダイアフラムで価格帯も全く違う2機種なので比べるのも酷なのですがU87Aiは流石というか定番マイクだけあって聞き馴染みのある音でしたね。
なおこの動画の音声は通常行う整音処理(マスタリング)を施してあります。
やはり製品になった時にどう聞こえるかが重要ですからね。

さて、モノラルマイクであるU87Aiで録音した音声は当然モノラルなのですが、実はソフト(DAW)上で三次元的に定位を配置する事が出来ます。
通常のミックス作業ではモノラルの音声をパンポットを使ってステレオに配置するわけですが、イマーシブオーディオでは専用プラグインを使ってこれと同じように音源を立体的に配置していきます。

下の動画は先ほどの音質比較と同じ音声ですが牧野さんにはいつもの収録と同じようにマイクの前から動かないようにしてもらって録音しています。
この状態で録音したモノラルの音声をソフト上で定位を動かしてみた音声がこちらです。
ここからはバイノーラル音声となりますのでヘッドホンを付けてご視聴ください。

U87Ai(モノラル)の音声をバイノーラル化して動かしてみた

いかがでしたでしょうか?
画面に表示されている2つの操作画面はいずれもグラフの中央が聞いている人の頭の位置となり、向かって左(画面中央)が頭上から見た平面図で右側がリスナーの後方から見た立体図となります。
分かりやすいように動かし方を変えたものを2種類作りましたが、操作画面上の(C)マークの位置と同じ位置に牧野さんの声が聞こえたのではないのでしょうか。
こちらの音声はU87Aiで録音したモノラル音声をNovoNotesのプラグイン3DX で三次元的に定位させた後にバイノーラル変換したものとなります。

今回は分かりやすく左右と前後の定位のみで確認しましたがもちろん上下の定位も可能です。
マイクもU87Ai以外のマイクでも同じ事が出来ます。つまり好きなマイクが使えるのです!

このように現在は頭部伝達関数(HRTF)の研究の進歩によりダミーヘッドマイクを使わなくてもバイノーラル作品が作れるようになりました。
例えばシチュエーションドラマなどのバイノーラル作品ではダミーヘッドマイクでの収録が必須でしたが、この方法を使えば好きなマイクを使ってシチュエーションドラマを作る事が出来ます。
またダミーヘッドマイクによるバイノーラル録音では録音時に対象者(音源)の定位が決まってしまうため後から定位を変更する事は不可能でしたが、この方法ならば録音をした後で定位を決めたり変更する事が可能となります。

という事で今回は通常のマイクを使った場合の立体音響の制作方法について試してみました。
このようにイマーシブオーディオに使用できるマイクは何もアンビソニックマイクやダミーヘッドマイクでなくても大丈夫なのです。
また使用できる音源もモノラルマイクで録音したボーカルや楽器、ステレオ音源のキーボードなど、つまり今まで通りの音源でイマーシブオーディオは作成する事が可能なのです。

Posted on 2022-03-08 | Category : ネイバーズからのお知らせ | | No Comments »